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Looker StudioからAmazon QuickSightへ – トイポ社が実現した低コスト・高性能な店舗向け分析機能

株式会社トイポは、店舗向けにリピーター獲得を支援する SaaS プラットフォーム「toypo」を提供しています。このサービスはリピーター増加施策や評価、改善を低コストで容易に行えるミニアプリプラットフォームであり、企業と顧客の関係性強化をサポートします​。

「toypo」では、かつて Looker Studio を用いて構築していた店舗の経営に重要な指標を可視化する分析機能を、AWS のBI サービスである Amazon QuickSight を中核にしたアーキテクチャへと変更しました。Amazon QuickSight のコスト効率の高さや AWS の他のサービスとのシームレスな統合、SPICE エンジンによる高速なデータ処理、柔軟なセキュリティ設定により、運用効率を大幅改善しました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業本部 アカウントマネージャーの鄭 葉瑠華と技術統括部 部長の濵 真一が、トイポ社 取締役 CPO の小神 寛晴 氏と執行役員 CTO の立石 賢吾 氏に Amazon QuickSight の導入経緯や成果などを聞きました。

ダッシュボードの開発・運用工数が大きく改善が回らなかった

鄭:はじめに、提供されているサービスの概要からお聞きします。

小神:私たちは店舗向けリピーター集客サービス「toypo」を提供しています。店舗独自の会員ランクシステムやポイントシステム、スタンプカード、モバイルオーダー、回数券、サブスクリプションなど、さまざまな機能を持ったサービスです。また、リピーターの集客を実現するために、顧客データを起点として課題を分析できるダッシュボードを提供しているのも特徴になっています。

類似のサービスを提供している他社は、店舗ごとに個別でアプリを開発している企業が多いです。その場合、開発にもコストがかかりますし機能を提供できるまでのリードタイムは長くなります。一方、私たちはミニアプリという構造をとることで低価格で高品質・多機能なサービスを提供していることが強みです。

株式会社トイポ 取締役 CPO 小神 寛晴 氏

濵:今回は Amazon QuickSight の活用にフォーカスしてお話を聞きたいのですが、まず BI ツールの利用・開発のきっかけからお願いできますか。

小神:Amazon QuickSight を導入する前から「toypo」ではダッシュボードの機能を提供していたのですが、当初はこの機能を自前で実装していました。店舗からの要望に沿ってダッシュボードの利用データや表示内容などを柔軟に変える必要があるのですが、開発・運用の工数が大きくて改善がうまく回らない状況でした。

そこで、マネージドの BI ツールを使って効率化したいと考えたのです。以前から、Looker Studio を使って社内向けのダッシュボードを作っていたため、その技術を店舗向けに流用という方針でプロジェクトが進みました。

ただ私たちはマルチテナントなSaaSとして提供する中で、ダッシュボードで使用するデータの行レベルでのアクセス権限管理のマネージドでの実現や、高速なダッシュボード表示が必要になってきました。

Amazon QuickSight はコスト・柔軟性・パフォーマンスいずれも高い水準のツール

濵:どのような基準に基づいて BI ツールを選定しましたか。

立石:複数のツールを比較したのですが、最も大切にしたのはコストですね。他社のツールには、高額な初期費用がかかるものもありますが、Amazon QuickSight は従量課金制であるためコストはかなり安く済みました。

また、私たちはインフラ構築のためにもともと AWS を使っていましたから、AWS 上ですべて完結できれば運用効率やセキュリティ、パフォーマンスなどに良い影響があります。他にも、Amazon QuickSight では行レベルセキュリティの設定機能があるため、店舗ごとに参照可能なデータを分けることができます。さまざまな要件に合致しており、このツールを使うことを決めました。

現在は、Amazon QuickSight から Amazon RDS for PostgreSQL のリードレプリカにつなぐ構成にしています。以前は Amazon RDS から BigQuery に 1 日 1 回データを転送する処理を行っていましたが、それも廃止できたためアーキテクチャがシンプルになりました。

株式会社トイポ 執行役員 CTO 立石 賢吾 氏

濵:Amazon QuickSight で使用するデータは SPICE に保存されており、更新が 1 時間ごとに行われます。より鮮度の高いデータを閲覧できるようになったのも、店舗にとってはうれしいポイントですよね。また、SPICE に保存されることでクエリの応答速度が速くなるため、パフォーマンスも改善されます。

立石:このアーキテクチャを構築するにあたって、AWS のソリューションアーキテクト (SA)の方にサポートしていただいたことは大きくプラスになりました。実は、私たちはもともと、Amazon QuickSight の存在を知らなかったのですが、教えてもらったからこそ導入を決めたんですよ。それ以外にも、行レベルセキュリティの設定やリードレプリカの構築なども、AWS のSAとディスカッションした内容がそのまま反映されています。

多種多様なデータを統合して、より価値のある分析・可視化を

鄭:今後、サービスやシステムのどのような点を改善したいですか。

小神:私たちは顧客データだけではなく、店舗に関するデータも大量に持っています。それらのデータを統合することで、店舗向けにより価値のある分析・可視化機能を提供していきたいです。そのためにも、ビジュアルのツールとして Amazon QuickSight をさらに積極的に活用しようと考えています。

Amazon QuickSight によって可視化した飲食店舗のリピーター分析

立石:アーキテクチャの改善や使用するソフトウェアのバージョンアップなどを、今後もコンスタントに実施していきます。AWS の方々とも引き続きコミュニケーションを取って情報を共有していただいたり、実際に作業を行う際にアドバイスしていただいたりと、これからもサポートを有効活用したいです。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業本部 アカウントマネージャー 鄭 葉瑠華

鄭:この記事を読んで、トイポ社に興味を持たれたエンジニアもいると思います。そうした方々に向けたコメントをいただきたいのですが、御社でエンジニアが経験できる業務にはどのような特徴があるでしょうか。

立石:トイポのエンジニアは「なんでもやること」が大きな特徴で、バックエンドとフロントエンド、ネイティブアプリ、インフラなどをすべて担当している人が多いです。一気通貫で複数の領域を経験できるので、広範なスキルを身に付けられます。

また、トイポの開発組織には日直という制度があります。これは、日直になったエンジニアが顧客からの問い合わせや不具合対応の主担当となり、その役割を日替わりで担うものです。日直は調査やコード修正のためにさまざまなリポジトリやインフラを見ることになるので、自然と多くの情報をインプットし、学びを深めることができます。

濵:Amazon の開発組織とすごく似ていると感じました。Amazon には「You build it, you run it(あなたが作ったならば、あなたが運用しなさい)」という言葉が浸透しています。これは要するに「私の役割は開発だから運用のことは知らない」と考えるのではなく、サービスに対するオーナーシップを持ち、開発から運用、さらにはビジネスのことまで一気通貫で責任を持とうということ。トイポ社には、その文化が根付いていますよね。最後に、読者に向けて Amazon QuickSight 導入にあたってのアドバイスをお願いします。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業本部 技術統括部 部長 濵 真一

小神:スタートアップが BI ツールを導入するならば、Amazon QuickSight が一番良い選択肢だと思います。セキュリティを高めるための機能もありますし、顧客の要望を聞いてダッシュボードを修正し、追加のデータを反映させることが早ければ即日でできます。どのような機能が顧客に刺さるかわからないという、不確実性の高い状態で高速に仮説検証を回せるため、スタートアップに適しています。

立石:もし Amazon QuickSight を使いこなせるか不安があるならば、AWS のサポートに伴走してもらいながら導入・構築をすることをおすすめします。今回の事例で私たちが Amazon QuickSight をスムーズに導入できたのも、AWS の方々と密に情報連携していたから。AWS のサポートは丁寧に教えてくれるので、すごく安心です。

濵:今回は貴重なお話をありがとうございました。