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製造セッションのハイライト – 第7回 AWS ライフサイエンス シンポジウム



AIエージェントによる生産とサプライチェーンのブレークスルーの実現
2023年に生成AIが注目を集めて以来、製薬生産ライフサイクルのあらゆる段階—バッチプロセスの最適化、ダウンタイムの削減、SOPの自動化、手動のワークフローを俊敏な自己学習システムへの転換など—における変革への期待が高まっています。しかし、この期待に反して、組織全体での本格的な導入はまだ道半ばです。この課題を克服するには、多くの場合、視点の転換が必要です。それこそが、オープニングセッション「Amazonから学ぶ」が提供した価値でした。AI、ロボティクス、デジタルインフラストラクチャを大規模に適用した場合の可能性について、新鮮な視点と強力なインスピレーションを参加者に提供しました。
小売とフルフィルメントにおける数十年の運営実績を活かし、Amazon Retailのセッションでは、リアルタイムの需要予測、在庫の最適化から、ベンダー管理、コンピュータビジョンによる品質管理、ラストマイル配送に至るまで、AmazonがAIをどのように活用しているかの舞台裏を紹介しました。このセッションでは、ライフサイエンス分野のリーダーたちが直面する様々な課題に対して、具体的な解決方法を段階的に示すとともに、実際に成果を上げているテクノロジーを活用した戦略について説明しました。
セッションの後半では、製造現場に焦点が移り、AIエージェントがすでに生産性の向上、欠陥検出の強化、トレーニング時間の短縮を実現し、保守ワークフローからMES(Manufacturing Execution Systems:製造実行システム)、さらには生産会議そのものまで、中核的な業務を再構築していることが紹介されました。
メッセージは明確でした:適切なツールとマインドセットがあれば、変革は単なる可能性ではなく、手の届くところにあるのです。
最先端のデジタル技術による自律型医薬品製造の再定義
次に、医薬品製造イノベーションセンターのマネージングディレクターであるDave Tudor氏が登壇し、AI、最先端のデジタル技術、持続可能な実践、そして深い分野横断的な協力によって実現される医薬品製造の未来への変革的なロードマップを示しました。Tudor氏は、生産の4つの重要な領域を再考することで、業界の最も困難な課題にどのように取り組んでいるかを共有しました:
- より迅速で省エネルギーな経口固形製剤製造を実現するデジタルツイン化された連続直接圧縮(CDC)プラットフォームの開発
- 遅延と無駄を排除するジャストインタイム、自動化された治験薬生産の実現
- 現在治療法のない疾患に対する治療法を可能にする、持続可能でスケーラブルなオリゴヌクレオチド生産方法の開発
- 医薬品製造4.0を推進する機械学習、AI、ロボティクスの導入加速
このビジョンの核となるのは、AWS上に構築された統合データ基盤を活用した、各工場が独立して運営できる新しい製造モデルです。この基盤では、工場設備、製造拠点、作業者からのデータを一元管理し、それらのデータの整理と統合を効率的に行うシステムを構築しています。さらに、誰でも簡単にデータを活用・再利用できる環境を実現しています。この強固な基盤により、製薬企業は新薬開発のリスクを抑制し、製品の市場投入までの期間を短縮することができます。また、より効率的で正確な製造プロセスが実現可能となり、人手に頼らないスマートな製造の新時代への道を開いています。
AIによる医薬品製造品質管理の革新
すべての医薬品の背後には、その安全性と有効性に依存している人々—親、医療従事者、友人、子供たち—がいます。PfizerのAI/ML、データ&アナリティクスのプラットフォーム&プロダクト担当バイスプレジデントであるMichael Morelli氏のセッションでは、この責任がPfizerの製造におけるイノベーションの規模拡大をどのように推進しているかが語られました。同氏は、Pfizerの品質管理(QC)ラボにおける品質と安全性を向上させるために設計された生成AI搭載のコンパニオンアプリ「QC Sidekick」を紹介しました。
QC Sidekickは、AWSの信頼性の高いデータ基盤上に構築され、Amazon Bedrockの生成AI技術を活用することで、ラボインシデントレポートの削減と問題の原因究明をサポートしています。さらに、データを見やすく表示し、傾向を分析し、作業手順書や実験方法にすぐにアクセスできる機能により、同じ問題が繰り返し起きることを防いでいます。この取り組みにより、実験ミスの減少、より迅速な判断、そして安全で効率的なラボ運営が実現しています。また、製品の不良や高額な製造ロットの不合格を減らすことで、Pfizerの収益性向上という会社全体の目標達成に貢献しています。QC Sidekickは現在、世界中の英語を使用するPfizerの製造拠点で導入されており、175年近い同社の製造における優れた実績をさらに発展させ、最新の生成AI技術によって進化を続けています。
製造現場から経営層までの可視性の実現
「測定されるものは改善される」。この原則がMerckのセッションで見事に実証されました。Merck製造部門のデジタルサービス組織のAVPであるWincy Fung氏と、データプラットフォーム&プロダクトのエグゼクティブディレクターであるRam Silai氏が主導したセッションでは、MerckのVisual Factory(ビジュアルファクトリー)イニシアチブが紹介されました。同社がPSQDC(People:人材、Safety:安全性、Quality:品質、Delivery:納期、Cost:コスト)フレームワークを通じて、製造業務全体で作業を標準化し、説明責任を推進する方法が示され、製造現場から経営層までのリアルタイムの可視性が実現されています。
Mantisは、120を超えるシステムのデータを一元管理するGMP基準に準拠したデータプラットフォームで、AWS上に構築されています。このプラットフォームでは、ユーザーごとに最適化された分析、ダッシュボード、データに基づく知見を提供しています。製造現場のスタッフは、設備の総合的な稼働効率(OEE)などの重要な指標をリアルタイムで確認できます。また、各拠点の責任者は日々の業務の全体像を把握でき、経営陣は世界中の拠点のサプライチェーンの状況を統一された形式で確認することができます。この取り組みにより、Merckの世界規模の事業運営において、すべての情報が見える化され、より素早い意思決定が可能となり、データを重視する企業文化への大きな変革が実現しています。
今後、Merckはこれらのソリューションを全社的に展開し、すべてのレベルでKPIを完全に標準化し、生成AIを活用して根本原因分析とよりスマートで迅速な意思決定の実現を目指しています。
対応型から予測型へ:AIによる製品苦情報告の変革
厳格な品質管理とKPIの追跡にもかかわらず、医薬品および医療機器企業は依然として高額な製品苦情と逸脱の課題に直面しています。企業は年間平均1,500万ドルを費やし、苦情の解決には最大20日、根本原因の特定には30日を要し、さらにそれらの原因を正確に特定する際のエラー率は89%にも上ります。この非効率性は、主に手作業で人的リソースを多く必要とするプロセスと、過去のデータの可視性の欠如に起因しています。
この課題に対処するため、PwCは、Amazon Bedrock上に構築された、苦情と逸脱の検出、分類、解決を自動化するAI駆動型の品質管理システム(QMS)ツールキットを紹介しました。このツールキットはあらゆる医薬品品質管理システムとシームレスに統合され、説明文からの苦情検出、AIによる調査概要の生成、逸脱報告書の自動評価、そして生成AIチャットボットを活用したグローバルな傾向分析ダッシュボードなどの機能を提供します。
その効果は顕著です:ある大手製薬企業では、このツールキットにより苦情解決時間が20日から1日に短縮され、根本原因の特定が30日から数分に短縮されました。年間100人分以上のフルタイム担当者(FTE)の工数を削減し、大幅なコスト削減と運営効率の向上を実現しています。
ライフサイエンスの新時代の到来
生成AIとAIエージェントが可能性を再形成し続ける中、ライフサイエンスのイノベーションの新時代が確実に到来しています。
組織が実験段階を超えて実世界での本格展開へと移行する中、長期的な成功の鍵は技術だけではありません—それは人材、プロセス、データの融合にあります。創薬研究、臨床開発、製造、コマーシャルのいずれの分野でイノベーションを推進する場合でも、AWSは効果的な取り組みの規模拡大を支援し、次のステップに向けて確実に前進できるようサポートします。
AWS担当者に今すぐ連絡して、世界のトップ10製薬企業のうち9社が生成AIと機械学習にAWSを選択している理由をご確認ください。未来は今日から始まっています—共に創造していきましょう。
参考資料
- 第7回AWS Life Sciences Symposium:基調講演のハイライト | 基調講演のダイジェスト動画を視聴する
- ライフサイエンスのイノベーションをAWSのAIエージェントで加速
- 創薬研究セッションのハイライト – 第7回 AWS ライフサイエンス シンポジウム
- 臨床開発セッションのハイライト – 第7回 AWS ライフサイエンス シンポジウム
- コマーシャルセッションのハイライト – 第7回 AWS ライフサイエンス シンポジウム