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【開催報告&動画公開】AWS で実現する VMware 仮想環境からの移行戦略 セミナー開催報告
注釈:2025年5月16日に Amazon Q Developer transform for VMware は AWS Transform for VMware という名称で一般提供を開始しました。
本セミナーの資料はこちらからダウンロード可能です。
はじめに
2025年4月24日(木)、「AWS で実現する VMware 仮想環境からの移行戦略」と題したセミナーを開催しました。本セミナーでは、多くの企業が直面している VMware 仮想環境の将来に関する課題と、AWS が提供する包括的な移行ソリューションについて詳しく解説しました。
昨今、クラウド活用が加速する中で、特に VMware を中心とする仮想化基盤を活用する企業においては、Broadcom 社による買収後のライセンス体系の変更や価格体系の見直しにより、運用コストの最適化とビジネスの俊敏性向上という課題への対応が求められています。ガートナーの調査によれば、VMware を利用するお客様の74%が代替案を検討し始めており、2025年には新しいデジタルワークロードの95%がクラウドネイティブプラットフォームに展開されると予測されています。
本記事では、セミナーで紹介した、VMware 仮想環境から AWS への移行戦略と具体的ソリューションについて、各セッションの内容をまとめてご紹介します。
セッションの紹介
オープニングセッション
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 常務執行役員 技術統括本部長 巨勢 泰宏
オープニングセッションでは、VMware 環境の現状と課題、そして AWS が提供する新たな選択肢について解説しました。
VMware は2000年代初頭からエンタープライズIT基盤を変革し、多くの企業が VMware あるいは ESXi を活用してインフラの統合や効率化を実現してきました。一方で、昨年の Broadcom 社による VMware 買収によって、ライセンス体系の変更や価格体系の見直しが行われ、多くの企業がコスト面での課題を抱えるに至っています。
このような背景から、AWS は昨年11月に、VMware ワークロードのための新たなサービスとして「Amazon Elastic VMware Service(EVS)」を発表し、プレビューを開始しました。Amazon EVS は VMware ワークロードを簡単に AWS に移行し、運用できる AWS 独自のサービスです。VMware Cloud Foundation (VCF) をお客様の VPC 内の EC2 ベアメタルインスタンス上で稼働させる形で提供され、最大の特徴はセルフマネージド型のサービスであることです。お客様は VMware 環境を完全にコントロールでき、オンプレミスと同等の運用管理が可能となります。
また、Amazon Q Developer を活用することで、VMware ワークロードの AWS への移行の効率化も可能になります。この AI アシスタントは、アプリケーションの検出、移行戦略の計画、移行実行などの変換タスクを自動化・簡素化し、クラウドへの移行を最大40%加速できます。
Amazon Elastic VMware Service (EVS) のご紹介
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 VMware シニアスペシャリスト ソリューションアーキテクト 武田 紘一
続くセッションでは、Amazon Elastic VMware Service (EVS) の詳細についてご説明しました。
VMware 仮想環境からの移行方法として大きく3つのパターンがあります:
- クラウドへの移行( IT 投資 ROI を向上)
- VMware 仮想環境の維持(変更を最小限に)
- 別の仮想化製品への移行(特定のソフトウェアプロバイダーによる影響回避)
Amazon EVS は2番目の選択肢に対応する、VMware 仮想環境を AWS でそのまま動かすサービスとして位置づけています。
Amazon EVS の主な特徴として以下の点が挙げられます:
- シンプルで迅速な AWS への移行: VMware 仮想環境をそのまま AWS に移行可能
- クラウド内の VMware アーキテクチャー制御の維持: お客様に完全な管理者権限を付与
- セルフマネージドまたはパートナーマネージドのサービス: 2つの提供モデル
- AWS のイノベーションとの連携: 他の AWS サービスと組み合わせて活用可能
技術的な詳細としては、EC2 ベアメタルインスタンス上で VMware Cloud Foundation(VCF)バージョン 5.2.1(vSphere 8.0 u3)が動作し、vCenter や ESXi などの管理者権限が付与されます。お客様所有の VPC 内にデプロイされるため、他の AWS サービスとの連携およびネットワーク接続も容易です。
サービスの提供形態として「セルフマネージド」と「パートナーマネージド」の2種類を予定しております。一般提供開始 (GA) 時点では「セルフマネージド」のうち、「BYOS(Bring Your Own Subscription)」モデル、つまりお客様自身で VMware Cloud Foundation (VCF) サブスクリプションを持ち込む形態でのサービス提供から開始します。今後は AWS からライセンス込み (License Included) モデルも提供予定です。
Amazon EVS の主なユースケースとしては以下の4つが考えられます:
- データセンターの拡張: オンプレミスデータセンターのキャパシティ不足時における、一部ワークロードのオフロード
- クラウドへの迅速な移行: データセンター解約期限が迫っている場合の丸ごと移行
- 災害対策: オンプレミス環境の災害対策環境としての活用
- モダナイゼーションの基盤: リフト&シフトの手段としての活用
VMware 仮想環境から AWS への戦略的移行パス及び、移行支援プログラムの活用 – 次世代デジタル基盤への進化 –
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 マイグレーション & モダナイゼーション技術統括本部 技術部長 内村 友亮
最後のセッションでは、VMware 仮想環境から AWS への戦略的移行パスや支援プログラムについて解説しました。
クラウド移行を検討する際の課題として、多くの企業がオンプレミスの仮想化基盤の限界に直面しています。主な課題として、ハードウェア関連コストや人的リソースの負担、スケーリングコストなどの運用コスト負担と、ビジネス俊敏性への対応(拡張時のセキュリティ確保、多様性確保、インフラ調達のリードタイムなど)の2点があります。
AWS への移行によるメリットとしては、コスト面(従量課金制、継続的な値下げ、サイジングからの解放)、技術面(開発速度向上、運用負荷軽減)、ビジネス俊敏性(迅速なリソース調達、豊富なサービス)、そして環境負荷低減(温室効果ガス排出量最大99%削減の可能性)などが挙げられます。
クラウド移行の全体像として、「3段階のクラウドジャーニー」を提示しています:
- ステージ1(リロケート): 既存システムをクラウドに移行し、インフラ管理の負担を軽減
- ステージ2(リホスト): クラウドの特性を生かし、高可用性やスケーラビリティを実現
- ステージ3(クラウドネイティブ): クラウドの特性を最大限に活用し、新たなビジネス価値を創造
また、7つの具体的な移行戦略(リホスト、リロケート、リプラットフォーム、コンテナ化、マネージドサービス採用、リファクタリング、リタイア)があり、システムの特性やビジネスニーズに応じた最適なアプローチを選択することが重要です。
移行を支援するプログラムとして、日本向けに特化した「AWS IT トランスフォーメーションパッケージ」を紹介しました。このパッケージは、移行前のアセスメントから実際の移行、運用に至るまでの一連のプロセスをワンパッケージにしたもので、経済合理性の評価や移行方法の検討、スキルギャップ分析などを通じて、真の目的に沿った移行を支援します。
移行ツールとしては「AWS Application Migration Service(MGN)」があり、VMware から Amazon EC2 への移行を効率的に行うことができます。AWS MGN を使った場合、移行時間を最大74%短縮できるという検証結果も示されました。
実際の事例として、東芝エレベーター様の例を紹介しました。同社は AWS の移行体験プログラム「EBA」を活用し、わずか2日間でアセット管理システムの本番・開発サーバー2台の移行を実現しています。
最後に、クラウド活用に向けた3つの重要なアクションとして、①経営の意思決定、②クラウド推進組織の設立、③クラウドネイティブスキルの育成とアジャイル文化の醸成を提案。「クラウド移行は目的地ではなく、デジタルトランスフォーメーションの出発点」であり、俊敏性向上やコスト最適化を継続することが重要です。
おわりに
本セミナーでは、Broadcom 社による VMware 買収後の環境変化に直面する企業に対して、AWS が提供する多様な移行ソリューションと支援体制について包括的に紹介しました。
Amazon Elastic VMware Service(EVS)は既存の VMware スキルや運用を維持したままクラウドへ移行できる選択肢として、また、Amazon Q Developer や AWS MGN などのツールは効率的な移行を支援するソリューションとして、それぞれの企業の状況やニーズに合わせた移行戦略を可能にします。
さらに、AWS IT トランスフォーメーションパッケージや EBA のような支援プログラムを活用することで、単なるインフラ移行を超えて、ビジネスのアジリティと競争力を高める次世代デジタル基盤の実現が可能です。
VMware 環境からの移行を検討している企業にとって、AWS は豊富な移行支援ツール、充実したサポート、そして実績のあるパートナーエコシステムを通じて、その移行とモダナイゼーションを総合的に支援するパートナーです。クラウドジャーニーの第一歩として、AWS のソリューションを検討することをお勧めします。
お問い合わせ
AWS への大規模なシステムの移行をサポートする AWS IT トランスフォーメーションパッケージ最新版のご利用に向けて、以下の2つの方法でお問い合わせいただけます:
- Web フォームからお問い合わせいただく : AWS クラウドに関するお問い合わせ | AWS
- 担当営業までご連絡いただく
AWS クラウドへの移行やモダナイゼーションにご関心をお持ちのお客様は、AWSで移行とモダナイズのページをご確認ください。AWS への移行やモダナイゼーションに必要な情報が網羅されています。
AWS IT トランスフォーメーションパッケージの最新版にご興味をお持ちのお客様は、是非上記2つのいずれかより AWS へお問い合わせください。VMware 仮想環境から AWS への移行を成功させるための第一歩をともに踏み出しましょう。
この記事はソリューションアーキテクトの藤倉 和明が担当しました。