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AWS Transform によるメインフレームと VMware ワークロードモダナイゼーションの加速
生成 AI は、組織に多くの新たな可能性をもたらしました。生成 AI により、組織は技術的負債を廃止し、レガシーシステムをモダナイズして、俊敏なインフラストラクチャを構築する新しい能力を身に付け、社内データに閉じ込められていた価値を引き出せるようになりました。その一方で、今もなおレガシー IT インフラストラクチャ、特にメインフレームと VMware ベースのシステムに依存している企業も多数存在します。これらのプラットフォームは、数十年にわたって重要な業務のバックボーンとして用いられていましたが、クラウドファースト戦略が優位を占める時代では、組織がイノベーションを起こし、効果的にスケールして、技術的負債を削減する能力の妨げになります。これらのワークロードをモダナイズする必要性は明らかですが、その道のりは従来、複雑でリスクが伴うものでした。
この複雑性は複数の側面にまたがるものです。財政面において、組織は増大するライセンスコストと高額な移行プロジェクトに直面します。技術面では、コンプライアンス要件を満たしながら、レガシー依存関係を解消する必要があります。組織面では、レガシーシステムを中心にキャリアを積んできたチームの移行を管理し、文書化されていない組織知に対処しなければなりません。
AWS Transform は、レガシーモダナイゼーションを高速化し、リスクを低減することを目的に構築されたエージェント型 AI を使用して、これらの課題に直接対応します。メインフレームと VMware 両方のワークロードの評価、計画、およびクラウドベースのアーキテクチャへの変換を自動化することで、プロセス全体を合理化します。組織は、インテリジェントなインサイト、自動化されたコード変換、人間参加型のワークフローを通じて、最も困難なモダナイゼーションプロジェクトでさえも、より確固とした自信とより優れた効率性を以って取り組むことができるようになりました。
メインフレームワークロードの移行
AWS Transform for Mainframe は、メインフレームワークロードを大規模にモダナイズするための初のエージェント型 AI サービスです。特化されたメインフレームエージェントは、初期評価から最終デプロイにおよぶモダナイゼーションのあらゆる段階全体の複雑なリソース集約型タスクを自動化することによって、メインフレームモダナイゼーションを加速します。COBOL、CICS、DB2、VSAM などの IBM z/OS Db2 上に構築されたレガシーアプリケーションの最新クラウド環境への移行を合理化し、モダナイゼーションのタイムラインを数年から数か月に短縮します。
それでは、AWS Transform が移行プロセスのさまざまな側面でどのように役立つのかを、いくつかの例を使って見ていきましょう。
コード分析 – AWS Transform は、メインフレームコードベースの調査、詳細な依存関係グラフの作成、コードの複雑性測定、およびコンポーネント関係の識別を自動的に行って、コードベースに関する包括的なインサイトを提供します。
ドキュメンテーション – AWS Transform for Mainframe は、メインフレームアプリケーションの技術と機能性に関する包括的なドキュメントを作成して、機能、プログラムロジック、データフローに関する重要な知識を保持します。AI 駆動のチャットインターフェイスを使用して生成されたドキュメントとやり取りして、情報をすばやく発見し、取得することができます。
ビジネスルール抽出 – AWS Transform は、複雑なロジックを抽出し、わかりやすい言葉で表現するので、レガシーアプリケーション内に埋め込まれているビジネスプロセスを把握することができます。このため、ビジネスと技術両方のステークホルダーが、アプリケーションの機能性をよりよく理解できるようになります。
コード分解 – AWS Transform は、インタラクティブな依存関係グラフやドメイン分離機能などの高度なコード分解ツールを提供することで、ユーザーが重要なビジネス機能を特定しながら、コンポーネント間の関係を視覚化して変更できるようにします。このソリューションは、ユーザーの好みを考慮して最適化された移行戦略を生成する、インタラクティブなウェーブシーケンスプランナーを用いた移行計画の合理化も行います。
モダナイゼーションウェーブプランニング – AWS Transform for Mainframe は、特化型エージェントを使用することで、コードとデータの依存関係、コード量、およびビジネスの優先事項に基づいて優先順位付けされたモダナイゼーションウェーブシーケンスを作成します。このため、モダナイゼーションチームは、特定の組織的ニーズに合わせてカスタマイズされたデータ主導の移行計画を策定できます。
コードリファクタリング – 何百万行ものメインフレームコードを数分でリファクタリングできる AWS Transform は、機能の等価性を維持し、CICS トランザクションをウェブサービスに、そして JCL バッチプロセスを Groovy スクリプトに変換しながら、COBOL、VSAM、および DB2 システムを最新の Java Spring Boot アプリケーションに変換します。構成可能な設定とバンドルされたランタイム機能を通じて高品質の出力を提供するこのソリューションは、可読性、保守性、および技術的卓越性を重視する Java コードを生成します。
デプロイ – AWS Transform は、ユーザー定義の入力を通じてデプロイプロセスを合理化する、カスタマイズ可能なデプロイテンプレートを提供します。効率性をさらに向上させるため、このソリューションは選択されたランタイムバージョンと移行されたアプリケーションをバンドルして、完全なパッケージとしてのシームレスなデプロイを実現します。
AWS Transform は、インテリジェントなドキュメント分析、ビジネスルール抽出、人間参加型のコラボレーション機能を統合することにより、組織がリスクを軽減し、事業継続性を維持しながら、メインフレーム変換を加速できるように支援します。
VMware モダナイゼーション
VMware ワークロードの移行とモダナイゼーションに関連する問題にもかかわらず、VMware のライセンス供与とサポートモデルにおける急速な変化に伴って、組織は代替案をますます模索するようになっています。この状況は、技術的負債の蓄積は往々にして複数のチームが管理する複雑で十分に文書化されていない環境を生じさせるという事実によって悪化しており、移行取り組みをさらに妨げるベンダーロックインやコラボレーション課題につながっています。
AWS Transform は、VMware モダナイゼーションでは初めてのエージェント型 AI サービスで、これらの問題を克服するために役立ちます。また、アプリケーションの検出、依存関係のマッピング、移行の計画、ネットワークの変換、EC2 インスタンスの最適化を自動化することによってリスクを相殺し、VMware ワークロードのモダナイゼーションを加速できるため、手動での作業が減り、クラウド導入が迅速化します。
このプロセスは、インベントリ検出、ウェーブプランニング、ネットワーク変換、サーバー移行の 4 つのフェーズに分類されています。エージェント型 AI 機能を使用して複雑な VMware 環境の分析とマッピングを行うことでネットワーク構成を AWS の組み込みコンストラクトに変換し、シームレスなカットオーバーのための依存関係を意識した移行ウェーブをオーケストレーションできるようにします。さらに、AWS のチーム、パートナー、およびお客様がモダナイゼーションジャーニーの全体を通じて足並みを揃えておくための、コラボレーション型のウェブインターフェイスも提供します。
では、この仕組みを簡単に見てみましょう。
設定
サービスの使用を開始する前に、まず AWS Transform コンソールに移動してサービスを有効にする必要があります。AWS Transform では、ユーザーを管理して適切な許可を設定するための AWS IAM アイデンティティセンター (IdC) が必要です。まだ IdC を設定していない場合は、最初に IdC を設定して、設定後に AWS Transform コンソールに戻ってプロセスを続行するように求められます。
IdC が利用可能になったら、暗号化設定の選択に進むことができます。AWS Transform は、デフォルトの AWS マネージドキーを使用するオプションを提供しますが、AWS Key Management Service (AWS KMS) 経由で独自のカスタムキーを使用することも可能です。
このステップを完了すると、AWS Transform が有効になります。コンソールへの管理者アクセスは、[Users] (ユーザー) に移動し、検索ボックスを使用してユーザーを検索することで管理できます。ユーザーまたはグループがまだ存在しない場合は、最初に IdC でそれらを作成する必要があります。サービスコンソールは、管理者がウェブアプリにアクセスするユーザーをプロビジョニングするために役立ちます。プロビジョニングされた各ユーザーは、ウェブアプリ用のパスワードを設定し、パーソナライズされた URL を取得するためのリンクが記載された E メールを受け取ります。
AWS Transform とは、専用のウェブエクスペリエンスを通じてやり取りします。URL を取得するには、設定内容を確認できる [Settings] (設定) に移動して、ユーザーとユーザーのチームがこのサービスの使用を開始できる AWS Transform ウェブエクスペリエンスへのリンクをコピーします。
検出
AWS Transform は、AWS Application Discovery Service コレクターを使用して VMware 環境を自動的に検出できます。または、既存の RVTools エクスポートファイルをインポートして独自のデータを提供することも可能です。
このステップを開始するには、[Create or select connectors] (コネクタを作成または選択する) タスクを選択して、検出に使用する 1 つ、または複数の AWS アカウントのアカウント ID を指定します。そうすることで、AWS Transform 内での使用を各アカウントに許可するためのリンクが生成されます。その後、[Perform discovery] (検出を実行する) タスクに進むことができます。このタスクでは、AWS Application Discovery Service コレクターをインストールするか、RVTools からのエクスポートといった独自のファイルをアップロードするかを選択できます。
プロビジョニング
プロビジョニングフェーズのステップは、先ほど説明した検出フェーズのステップと似ています。ターゲット AWS アカウントは、そのアカウント ID を入力し、承認リクエストを検証することで接続します。接続されると、[Generate VPC configuration] (VPC 設定を生成する) ステップなどの次のステップが有効になります。ここでは、RVTools ファイル、または Import/Export from NSX からの NSX エクスポート (該当する場合) をインポートして、AWS Transform がネットワーク要件を理解できるようにします。
その後、Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) をデプロイする準備が整う時点まで、ジョブ計画の作業を続けてください。すべての Infrastructure as Code (IaC) コードは、ターゲット AWS アカウント内の Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) バケットに保存されます。
提案された変更を確認して、問題がなければ、ターゲットアカウントへの AWS リソースのデプロイプロセスを開始します。
デプロイ
AWS Transform では、移行プロセスを自動化するために、ターゲット AWS アカウントで AWS Application Migration Service (MGN) を設定する必要があります。[Initiate VM migration] (VM 移行を開始する) タスクを選択し、リンクを使用してサービスコンソールに移動してから、指示に従って設定を行います。
サービス許可を設定した後は、AWS Transform で作成されたウェーブの実装フェーズに進み、移行プロセスを開始します。各ウェーブでは、最初に Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) インスタンスの希望サイズやテナンシーの設定などのさまざまな選択を行うように求められます。選択内容を確認したら、[Deploy replication agents] (レプリケーションエージェントをデプロイする) ステージに到達するまで AWS Transform の指示に従って作業を続けます。このステージでは、対象ウェーブの移行を開始できます。
ウェーブ移行プロセスを開始した後は、いつでもダッシュボードに切り替えて進捗状況を確認できます。
AWS Transform は、そのエージェント型 AI 機能を使用して、メインフレームと VMware のモダナイゼーションワークロードを加速し、リスクを低減するための強力なソリューションを提供します。複雑な評価プロセスと変換プロセスを自動化することよって、レガシーシステムの移行に関連する時間を短縮しながらエラーや業務中断の可能性を最小限に抑える AWS Transform は、より俊敏かつ効率的で、将来を見据えた IT 環境を組織内で実現します。
知っておくべきこと
可用性 – AWS Transform for Mainframe は、米国東部 (バージニア北部) リージョンおよび欧州 (フランクフルト) リージョンでご利用いただけます。AWS Transform for VMware は、データ収集と移行のためのさまざまな利用オプションを提供します。詳細については、AWS Transform for VMware FAQ を参照してください。
料金 – 現在、評価と変換を含めたコア機能は AWS のお客様に無料で提供されています。
以下は、詳細情報をお読みいただけるリンクです。
メインフレームモダナイゼーションをさらに深く掘り下げ、AWS Transform for Mainframe の詳細を学ぶことができます。
VMware モダナイゼーションの詳細と、VMware 移行ジャーニーを開始する方法を確認できます。
こちらの AWS Transform for Mainframe インタラクティブデモと、AWS Transform for VMware インタラクティブデモもご覧ください。
– Matheus Guimaraes | codingmatheus
原文はこちらです。
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